取材速報:七里ガ浜パーク&レールライド・由比ガ浜パーク&バスライド・鎌倉フリー環境手形(担当:樺山委員)

 12月1日(土)神奈川県・鎌倉市「七里ガ浜パーク&レールライド・由比ガ浜パーク&バスライド・鎌倉フリー環境手形」
古都鎌倉は、三方を山に囲まれ一方が海という閉鎖的な地形で、日祭日や行楽シーズンには観光目的の車が大量に流入し、著しい交通渋滞によって市民生活や観光客の行動に大きな影響を与えています。
 この問題を改善する方策を検討するために、市民参画による研究会が発足しました。社会実験を行い、その成果として今回3施策を実施するに至りました。鎌倉市における「快適空間としての道」づくりはどのように進められているのか、取材するために現地を訪れてみました。






鎌倉市の交通事情


鎌倉市の交通事情  古都鎌倉を訪れる観光客は年間約1,760万人で、1日あたりで計算すると、約48,000人になります。鎌倉地域に居住する人口が約46,000人ですから、ほぼ同数が毎日流入していることになります。鎌倉地域に流入してくる車は38,000台という調査データもあるそうです。
 これだけの数が鎌倉時代の道路網を今なお踏襲する地域に入りこむのですから交通渋滞が発生するのは当然です。住民の生活道路にも車が溢れますし、市民の足となるバスの運行もなかなか時刻表通りにはいかず、駅などでは入ってこないバスの代替えとして見切り発車もしていますが、交通事業者としても採算が合わないなど困った状況です。
 鎌倉において住宅都市と観光都市を調和させるのは至難の技といえます。
 一方、古都鎌倉は、歴史的環境の保全などさまざまな制約によって短期間での道路整備を行うのが困難なため、どうしても既存の道路を活かした交通需要管理(TDM)手法を用いて交通施策を考える必要があったのです。





市民参加の「鎌倉地域交通計画研究会」の取り組み


市民参加の「鎌倉地域交通計画研究会」の取り組み  地域の交通事情を改善していく方策は、市民生活や産業活動に大きく関わりを持つことから、市民、商業者、事業者にスタートから入ってもらい計画を検討することになりました。こうして平成7年に発足したのが「鎌倉地域交通計画研究会」です。
 この研究会は市民が中心となった画期的な組織で、委員が前に座って行政の担当者は後ろのテーブルに着席して会議が進められたそうです。研究会聴講者を募集するなど一般に公開するとともに、市民アンケートの実施や検討結果を研究会ニュースとして情報提供するなど、市民の理解と協力を得る努力をしたそうです。
 この研究会では「市民宣言(案)」を作成して、「鎌倉市民みずからがマイカー利用を自粛し、徒歩と公共交通を中心とする交通環境を作り、古都鎌倉のまちづくり進める」、との基本的な精神をうたいました。これに基づき、活発な議論を重ねた結果をまとめれたものが、平成8年5月に示された20の施策からなる「鎌倉地域の地区交通計画に関する提言」です。





研究会による20の提言、3施策の実施


研究会による20の提言、3施策の実施  20の施策は、「ロードプライシング」や「歩行者尊重道路」などのさまざまな計画案から成っていますが、今回実施する3施策は、平成8年・10年・11年に市民ボランティアの協力を得て社会実験を行い実現可能であると判断されたものです。
  1. 七里ガ浜パーク&レールライド:鎌倉地域から西へ約4km離れた七里ガ浜にある駐車場(343台)に自動車を停め、徒歩約1分の江ノ電七里ヶ浜駅で電車に乗り換え鎌倉地域へ入ってもらうシステム。
  2. 由比ガ浜パーク&バスライド:鎌倉地域に入る南の玄関口の由比ガ浜地下駐車場(200台)に自動車を停め、シャトルバスに乗り換えて鎌倉地域へ入ってもらうシステム。
  3. 鎌倉フリー環境手形:鎌倉地域内の電車及びバスの乗車料金をセットにして手頃な乗車券を販売することで、出発地から公共交通を利用してもらうシステム。
 1と2は自動車対応の施策です。3は、1,760万人の観光客の内75%を占める鉄道利用者を対象としたものです。また、環境フリー手形の販売には、シルバー・ボランティア・ガイド協会の協力を得ており、販売とともに的確な観光アドバイスも行っています。





市民と行政との協働による「快適空間としての道」づくり


市民と行政との協働による「快適空間としての道」づくり  「音が静かで道路事情にあった小さなバスを運行させてほしい」という市民の声を聞きました。バス事業者としては、小さなバスでラッシュ時に対応できるかという課題に取り組む必要が出てくると思います。また、「市民参加型の研究会は、時間と労力がかかる。早く決めたい案件には合わないのではないか」という意見もありました。市民参加型の行政を行うには、どのような取り組み方がよいのか検討することも課題にとなると思います。
 取材を通じて感じたことは、課題を抱えつつも市民/行政/商業者/交通事業者がそれぞれ協働で交通施策に取り組もう、という合意が形成されていることです。「研究会では難しい面もあったが、皆の意識が交通問題に向いて、知恵を出し合ったということが大きな成果」という市民の声がこれを代弁していると思います。これからの高齢化社会に向かって、規制するだけではうまくいきません。さまざまな立場からの提言を複合的に組み合わせて、選択肢を増やすことで新たな交通施策が生まれてくることと思います。


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